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これは来月発売のアロマトピア誌#121号に寄稿した記事です。とても興味深い内容の記事が多いので、是非読んでみて下さいね。私の記事を紹介します:これはエッセンシャルオイルのシンパシーとアンティパシーですが、メディカル・アストロロジーにおける古典的方法です。参考にしてください。
メディカル・アストロロジーにおけるシンパシーとアンティパシー <伝統医療に基礎を置く> “ある物が生まれた瞬間は、その性質を表す”というカール・ユングの言葉は、占星術に限らず伝統医学の体質、気質、病状などの考察に太古より実践されて来た指針を言い当てています。17世紀の医師ニコラス・カルペパーは患者の具合の悪くなった時間でデカンビチュア・チャートをたてて、患者の状態や薬剤の選択に役立てて来ました。人間は小宇宙(ミクロコスモス)、天体は大宇宙(マクロコスモス)として関係性が常にあるのですから、双方の状態を注意深く検討しながら治療を進めて行くのは、究極のホリスティック療法なのかもしれません。 18世紀以降、科学が発達して病は悪魔がもたらすものではなく、病原菌、遺伝子、変性などの原因で起こることが解明され、チャートをたてたり、四元素を観察したりということは迷信めいて考えられて来ました。17世紀のカルペパーの時代でさえ、16世紀まで医学部で教えられていた占星術が顧みられなくなったことで攻撃を受けたと言われています。 中国哲学を基礎とした中医学では五行陰陽説が使われており、日本では常になじみが深い考え方です。その西洋版(ギリシャ・ローマ、アラブ世界)だと言えば、様々な偏見がなくなるのではないでしょうか。西洋ベースでは四元素(火,土、風、水)が中医学では五元素(火、水、木、金、土)、そしてチベット医学では“金”ではなく“空”が入ります。ユングやシュタイナーも四元素の考えを人の性質を見るために役立てており、分析し心理学的な分類法、対処法、教育法などを確立しています。 まず、シンパシーとアンティパシーを考えるときには、四元素の性質に対して使用して行くので各々の性質を知る必要があります。ここではメディカル・アストロロジーを基礎とした説明と精油を対応させた方法を記述します。四元素の解釈は中医学と同じく、自然を観察することから理解が始まります。 ![]() <四体液質> 4つの性質により世界が成り立っていると考えたのはエンペドクレスで、この4つを体質と気質の特徴として分けたのはヒポクラテスと言われています。メディカル・アストロロジーで有用なのは、チャートに表れる10惑星のサイン(宮)の四元素を見ることにより、その人の基本的な体質、気質、起こしやすい障害を予測することができることです。ウィリアム・リリーは「アセンダントや目立って多くの惑星がひとつの元素に偏っていると、その典型的な症状が現れる傾向がある」と記述しています。 火は熱と乾で、エネルギーを供給する熱と光を象徴し、直観を支配し、活動的、情熱的,創造的、主観的です。起こしやすい症状は炎症、発熱、体温調節の機能障害、熱痙攣、熱射病など、身体の熱の調整 地(土)は冷と乾で、地球と土壌を象徴し、身体感覚を支配し、慎重で責任感があり、現実的、実践的、客観的です。起こしやすい症状は骨格や骨の変形、脱臼、骨粗鬆症、抑うつなど、身体の基礎力の調整 風(空気)は熱と湿で、大気、呼気を象徴し、思考を支配し、知的、社交的、情報通で刹那的です。起こしやすい症状は呼吸器障害、血液に関する問題や血行障害など、身体の循環の調整 水は冷と湿で、土壌を肥沃にする水を象徴し、情感を支配し、情緒的、感情移入、想像力が豊かです。起こしやすい症状は浮腫、リンパ系の障害、冷え、肥満など、身体の水分の調整 ![]() 元素 体質 体液 クォリティー 器官 惑星 火 胆汁質 胆汁 熱、乾 胆嚢 太陽、火星 地 憂鬱質 黒胆汁 冷、乾 脾臓 土星 風 多血質 血液 熱、湿 肝臓 木星 水 粘液質 粘液 冷、湿 肺 月、金星 火の精油:温める効果(度数1〜4)、刺激性のあるもの、針葉、果皮、スパイス類など ブラックパッパー、シナモン、ジンジャー、ローズマリー、パイン、オレンジ、ヘリクリサム 地の精油:土の香りのするもの、落ち着かせる効果、根、樹木類など ヴェティバー、スパイクナード、アンジェリカルート、シダー、サイプレス、パチューリ 風の精油:揮発性があり思考を刺激活性するもの、草本、広葉など ユーカリプタス、ペパーミント、マートル、ラヴェンサラ、ヒソップ、レモングラス 水の精油:保湿し情緒に働きかけ、身体的精神的に冷却効果のあるもの、樹脂、花など ベンゾイン、ロックローズ、イランイラン、ローズ、クラリーセージ、ロータス <シンパシー(同調)とアンティパシー(拮抗)> シンパシーとは同調、アンティパシーとは拮抗の意味です。シンパシーとして薬剤を使用することも、アンティパシーとして使用することもできます。カルペパーはこの四元素を天体やサインに対応させ、それらが支配する植物を適切な性質を持つ患者に対して処方をしました。頭痛を例にとると、頭部は牡羊座、火星に支配されているのでシンパシーを使って精油を選ぶとすると、バジルやローズマリーになります。でももしクライアントが高血圧であるのなら、火星のエネルギーを強めすぎてしまうので、アンティパシーを使います。火星の拮抗は金星なので、金星支配の精油であるペパーミントやマートルを使うことになります。もちろんローズやゼラニウムも金星の植物として有名ですが、頭痛に対する作用がいまひとつなので、ここでは選びません。このように症状やチャートからの情報だけで決められるものではなく、ある程度の数の候補の中から適切なものを選び出す植物や精油の知識も必要になります。 また、シンパシーはもともとの患者の体質に合っているものを与えて、本来の性質を高めることで治療する方法にも使えます。女性特有の問題に関してローズ(金星)やクラリーセージ(月)などの女性性の強い性質の植物や精油を使用することが一例です。対症的に浮腫を乾の性質を持つアンティパシーにあたるジュニパーやアンジェリカ、ブラックペッパーなどの精油でトリートメントすることもできます。 <アンティパシーの関係> 火(熱、乾) <ーーー> 水(冷、湿) 風(熱、湿) <ーーー> 地(冷、乾) 太陽、月 <ーーー> 土星 火星 <ーーー> 金星 水星 <ーーー> 木星 性質の判別の方法は、過去の占星術師、医師により見解が分かれるところがあります2世紀のプトレマイオス、9世紀のアル・ビルニ、10世紀のイブン・シーナ、15世紀のマルシリオ・フィチーノ、16世紀のパラケルスス、17世紀のニコラス・カルペパー、ウィリアム・リリーの文献を比較してみるとそれぞれの見解があります。また、1つの植物でも複数の性質を持つものがあるので、絶対的なカテゴライズが難しい部分は残されています。例として、ジンジャーはスパイシーな風味と効果で火に分類されていることが多いのですが、地下茎なので、特に二酸化炭素抽出法で採られた精油は土の性質が強く出ています。この場合は、火と土の両方の性質が必要な人に使用することもできます。また、サイプレスは昔から地に分類されていますが、精油にすると動きを活性化して余分なものを排出するという、風の性質を感じます。このように複雑ではありますが、各々の植物や精油をよく知り、性質を見極めて使用して行くことが重要です。 <ネイタル・チャートとデカンビチュア・チャート> チャートを使用する方法は“メディカル・アストロロジー”(ワンダ・セラー著、フレグランスジャーナル社刊)に詳しく紹介されていますが、まずチャートの基本情報を読み、そしてチャート上に示された緊張を緩和したり、刺激したりして問題を解決して行きますが、クライアントから情報を引き出し、よく観察してから結果を導き出すのが必須です。実際にカルペパーが実践した方法はネイタル・チャート(誕生図)ではなく、デカンビチュア・チャート(具合が悪くなり横になった時間と場所)で見ました。こちらの方がより特定の症状に関してのリーディングが正確にできます。ネイタル・チャートはその人の“先天の気”として一緒に比較検討に使うとさらによいでしょう。 様々なデカンビチュア・チャートを読んでいると、重篤な病状のチャートと軽度な病状、慢性化しそうなもの、回復したけれども危機一髪だったものなどが読み取れるので、チャートを最初に見る時は緊張します。また、そこからどんな薬剤が役立つかを抽出するのは本当に興味深い作業です。 <おしまいに> 大切なことはミクロコスモスとマクロコスモス両方からのアプローチです。チャートが示しているものを本人がどのように地球上で体現しているかは、その人の遺伝的、環境的要因、ライフスタイルが大きく関わってくるでしょう。チャートには体質、気質、病気の性質、薬剤などが表れて来ますが、本人がもともともっているものと比較し、ライフスタイルや既往症などをよく検討してから使用する植物、精油、リメディーなどを選んでいくのが大切です。ただチャートに出て来たものだけを読んでも片手落ちになってしまいます。ユングは“シンクロニシティー”(共時性、意味のある偶然の一致)についても論じていますが、拡大解釈は療法としては注意しなくてはなりません。 ![]() ***メディカル・アストロロジーはニコラス・カルペパーの方法を基礎にして勉強します。2014年1月末から6回コースをしますので、占星術の基礎を習得されている興味のある方はご参加下さい。お待ちしています。 ちなみに今日は私の誕生日です。ニコラス・カルペパーとビル・ゲイツ、ジュリア・ロバーツ、ホアキン・フェニックスと同じ日です! ▲
by lsajapan
| 2013-10-28 15:51
| 占星術
9月27日はアメリカからクリストファー・ワーノック氏をお迎えしてセミナーをしました。コーディネーター兼通訳は私の占星術の長年の先生である芳垣宗久先生です。ワーノック氏のユニークなところは、スコットランドでルネッサンス史の修士号を取得し、その後ロースクールで学び弁護士になり、ワシントンD.C.で15年国選弁護士をして来たという経歴です。ワーノック氏曰く「占星術も弁護士の仕事と似ているところがあるんだよ。過去の例を出してきて比べてみたり、一度見たことのあるケースを引き合いに出して結果を導いて行くあたりがね。」
現在では弁護士は趣味(!)としてやっており、占星術師としての仕事がメインだとお話ししてくれました。ワシントンD.C.では犯罪関係の弁護をしていたので、現在は知り合いの人たちの大家さんとのトラブルや税金関係の相談(日本だと税理士にだと思いますが、法律に絡んで来るとアメリカでは弁護士に相談するそうです)にのっており、現在7件ほどを取り扱っているそうです。ふ〜ん、すごいですね。何だか占星術の話から大変逸れてしまいましたが、いつも周りにいる方たちとは違うので、興味津々でいろいろとお聞きしてしまいました。 ![]() ところでピカトリクス(Picatrix)についてですが、これは占星術をベースにした魔術(Astrological Magic)で、どちらかと言うと陰陽道の西洋版のようなものだとおっしゃっておりました。11世紀頃にまとめられたもので、アラビア語で編纂されたものだそうです。過去300年程封印されていたものです。魔術と言うと恐ろしいものを想像したり、不可能なことを可能にするということを想像しますが、これは宇宙と人間の心理に働きかけて変化を起こすというものです。迷彩色というのは、確かにそこにいる存在をあたかもいないように見せかける効果を示しますが、占星魔術はそんな感じだそうです。実際に3次元の世界では同じであっても人間の心理や知覚、認知に働きかけて変化を起こすというわけです。 ![]() こちらはPicatrixアラビア語版 特定な惑星に祈る(願をかける)場合は、適切な占星時間を算出して,適切なタリズマン(護符)を用意して儀式を取り仕切る必要があります。これを全てマスターするのには、数年間の勉強を要するそうです。 ![]() ![]() ![]() 金星は愛と美と友情,喜びに、木星は豊穣と家族の幸せのため、成長と発展に・・・などととても平和な感じです。でも恒星のアルゴルなど、ちょっと怖いタイプの天体に祈るということもあるのでは?ワーノック氏はアルゴル(ゴーゴン、メデゥーサとも言いますよね。頭が毒ヘビの怪物)のタリズマンを使った儀式をした際には、コンピューターなど家の電気システムが1時間近くもダウンしたそうです。他の人たちに災難がかかるようなことをすると、自分にも鏡のように同じことが起こるそうな・・・・・だからよい目的のため、それも自分の努力を含めて願いを実現するエネルギーに働きかけるという姿勢で臨むことです。悪魔には祈りません。ポジティブな存在にのみ関わります。 ![]() 私がPicatrixに惹かれるのは、時代背景とその時代の人々がどんな世界観を持っていたかを教えてくれそうな点です。それとやはり錬金術とは深い関係があり、ヘルメス・トリスメギストスが最初にエジプトで占星魔術をつくり出したと言うことです。本当にエッセンシャルオイルと占星術には深いつながりがあるんですね。 10月10日にはPicatrixについてのレクチャーとタリズマンの説明、一人に一枚ずつタリズマンを配布して、色を塗り、獅子座の第3デカンに対する儀式をします。牡羊座と火星に関係が深く、愛と楽しみ、幸運に関係が深いデカンだそうです。興味がある方は是非いらして下さい。 ![]() ▲
by lsajapan
| 2013-10-02 01:23
| セミナー
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![]() LSA (ロンドン・スクール・オブ・アロマテラピー・ジャパン) の校長バーグ文子が学校の紹介、アロマテラピーや自然療法、役に立つ情報などについて気ままに語ります。ウェブサイトはwww.lsajapan.com by lsajapan カテゴリ
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