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<19> Vitex agnus-castus  ヴァイテックス

先月末から出張やニューヨークや京都からの来客などが相次ぎ、そして今月は卒業試験があり、その1週間後には新入生を迎えました。今日やっと卒業試験を全部生徒たちに返して、ビジネススタディーの講師を迎え、有意義な授業を終えてホッと一息ついたところです。そこにIFAから会報誌のAromatherapy Times が送られて来ました。春号から日本語版が出たのですが、今回英語版と日本語版両方にヴァイテックスの記事を書かせていただきました。でも何故か日本語版が送られてこないので、ここに紹介したいと思います。多分もう私よりも早く日本語版を読まれた方も多いと思いますが、より多くの方にこの植物のメリットを知っていただきたいと思います。(1)や(2)と書いてあるのは文末にある参考文献のナンバーです。ヴァイテックスのエッセンシャルオイルに興味がありましたら、ロタンシエルで取り扱っておりますので、お問い合わせ下さい。ヴァイテックスのエッセンシャルオイルは今までのオイルにはない、ホルモン様作用がなく安全性が高いのに女性ホルモンのバランスを効果的にとる珍しいものです。

ヴァイテックスの紹介

ハーブでは馴染みのあるヴァイテックス(学名:Vitex agnus-castus)は日本では“イタリアニンジンボク、またはテイソウボク(貞操木)、ドイツでは伝統的に”Monk’s Pepper”(修道士の胡椒)、英語圏では”Chasteberry”や植物自体を”Chaste Tree”と呼んでいます。この植物は女性の内分泌系のバランスをとり、月経周期や月経にまつわるトラブルのためや消化器系の障害、そして“情熱を鎮めるため”に薬草療法に使われて少なくとも2000年の歴史があります。近年ではエッセンシャルオイルを使用した研究がいくつか存在し,植物を使うよりも効果的だという報告があります。(1)この記事では自身の研究会を含めた、特に女性の月経周期とそれに関連したトラブルへのヴァイテックスの効果を報告します。

ヴァイテックスの原産地は南ヨーロッパ(イタリア、ギリシャ)で、その葉と種子は薬用として古代より使用されて来ました。クマツヅラ科の美しい植物で、2〜3メートルの高さになり幅も同じくらいの落葉樹で枝先に美しい紫〜ブルーの円錐花序の花をつけます。葉は約10センチで、5枚かそれ以上が手の平を広げた様な形で構成されてます。暖かい気候を好み、西アジアや南ヨーロッパで栽培されています。

ヴァイテックスのエッセンシャルオイルの香りは決して魅力的な香りとは言いがたいのですが、子供のとき遊んだ雑草のヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca Americana L.) に似ており、皮膚に塗布してしばらくするとフランキンセンスを思わせる香りに変化して行きます。例えばクミンのエッセンシャルオイルやイブニングプリムローズオイルのように塗布した後に個性的な香りがしすぎて気になる・・・ということもありません。

ヴァイテックスの歴史

まず名前の由来はギリシャ語で”agnus-castus” は“貞操”という意味で、古代ギリシャの博物学者プリニウスの文献には制淫作用のために植物を使用すると書かれています。(2)13世紀頃のアラブではよく知られた薬草でてんかんや精神疾患に主に使われました。(3)イギリスでは16世紀ジョン・ジェラルドの植物誌の中で女性のための薬草として紹介しました。葉や種子を子宮の炎症や痛みのために、またペニーロイヤルの葉とヴァイテックスの種子を一緒に使用すると月経を引き起こすとされています。(4)18世紀以降にはイギリスで人気が出て女性の生殖器系の障害に使われました。またフランスでは修道院で使用された歴史もあり、そこから”Monk’s Pepper” の名前が由来しています。近代ではドイツで1930年代のGerhard Madaus博士がヴァイテックスの薬草を使用した女性の内分泌系への影響をリサーチしています。

ヴァイテックスの効用、成分

* ヴァイテックスには以下のような作用があります。(5)
解熱作用、鎮痛作用、発汗作用、通経作用、子宮強壮作用、利尿作用、駆風作用

* ヴァイテックスには以下のような適用例をあげることができます。(6)
頭痛、発熱、炎症、浮腫、消化不良、鼓腸、PMS、更年期障害、月経不順、その他の月経の障害

多くの作用や効用がありますが、リサーチの対象になる症状の多くは女性の内分泌系の不均衡が多く、被験者へのヴァイテックスのドライハーブ、チンキ剤、エッセンシャルオイルでの有効な結果があります。ヴァイテックスはエッセンシャルオイルの形で使用すると顕著な効果を示す報告が近年されており、これは脳下垂体に直接働きかけ、ホルモン機能を促進、正常化するのを助けます。(7)また、他の文献にはFSH(卵胞刺激ホルモン)の放出を抑え、LH(黄体形成ホルモン)の放出を増やすとも書かれています。(8) 

PMSや月経周期の問題には、重すぎても軽すぎても、短いサイクルや無月経にも調整するという働きにより使用してみる価値があります。使用法で重要なのは長期に渡って使用すること。これが他のハーブやエッセンシャルオイルと違うところです。研究では10日から1年6ヶ月までの結果があります。研究者の意見では2〜3週間で症状が改善され始めたり、月経不順やPMSの場合などは約2〜3ヶ月(月経周期2〜3回)から効果を見ることができます。これはホルモン様作用ではなく、脳下垂体に働きかけて黄体を刺激し、プロゲステロンを分泌させることにより、ホルモン調整するので危険性はきわめて低いと言えます。(9) 身体にショックを与えることなくホルモンのバランスを整えるには時間がかかるということを理解し、きつい副作用の懸念される強い薬とは全く別のものと見解を変えると言いでしょう。ヴァイテックスはゆっくりと穏やかに効果を示します。(10) 更年期の不快な症状のためにも効果的(11)ですが、ヴァイテックスを使用すると共に食生活や適度な運動にも配慮すると効果が出やすいことがわかっています。(12)

以下にヴァイテックスの種子からのエッセンシャルオイルの成分を載せておきますが、この中ではっきりとした活性成分は確実には判明されていません。

ヴァイテックスのエッセンシャルオイルの成分(種子)(13)
サビネン       24.16%
aーピネン        6.61%
pーシメン        0.92% 
1、8ーシネオール  19.61%
b−ファルネセン     6.18%
bーカリオフィレン    3.81%
酢酸 aーテルピニル   4.16%
水酸化トランスーサビネン 0.31%
水酸化シスーサビネン   0.27%
テルピネン−4−オール  2.37%
aーテルピネオール    0.82%

副作用

以上に書いたようにヴァイテックスには目立った副作用がなく、過去2000年に渡り安全に使用されて来た歴史があります。(14) 一方、バーバラ・ショパン・ラックスのリサーチでは23人の女性に2〜3ヶ月の期間ヴァイテックスのエッセンシャルオイルを使用して得た結果の中の可能性のある副作用としては頭痛、吐き気、湿疹、悪夢などがあげられています。注意書きが添えてあり、オイルの使用をやめるか量を減らす、または使用法を変えることによりすべての副作用はすぐに消えたということです。大部分の被験者は最初の2週間でこのような症状が出て来ており、症状の出たのは2〜3日間と報告されています。15 個人的反応を見るためにも、2週間をトライアル期間と考えてみるといいでしょう。LSA JAPANで2008年に行ったリサーチ・プロジェクトでも1名がめまいを覚え、1名が元々あった湿疹が悪化したので使用を中止してもらいました。どちらの症状も被験者が過去に経験しているもので、ヴァイテックスを使用して助長されたと考えられますが、突然引き起こしたものとは言えません。また被験者のストレスの度合いやライフスタイルなど完全にコントロールできていない部分が関与している可能性もあります。

禁忌

ホルモン補充療法(HRT)や避妊ピル、他のホルモン療法を行っている時は、ヴァイテックスを使用しても全く効果はありません。併用しても害はありませんが、一部の意見では避妊ピルの効果を弱めると言う意見もあります。また妊娠中、授乳中は専門家の指示がない限りは使用を避けましょう。抗うつ剤や向精神薬を飲んでいる場合はヴァイテックスの使用を見合わせるのお勧めします。ヴァイテックスの使用中には他のホルモン様作用のあるエッセンシャルオイルやハーブなどを大量に使用しないことです。

ヴァイテックスの使用法

ヴァイテックスのエッセンシャルオイルを朝シャワーをした後に1日左右1滴ずつ手首に塗布します。(個人のスケジュールに合わせて、だいたい毎日一定の時間に付けるのが望ましい)。効果が出始めるのが早い人で10日程度、人により4週間〜2ヶ月かかる場合もあるので、最初は気長に使用するといいでしょう。

Vitexの過去の研究報告

 Wuttke, W; Jarry H, Christoffel V, et al. (May 2003).
“Vitex agnus castus – Pharmacology and clinical indications”.
ヴァイテックスの実(エクストラクト)を使ったPMSへの効果の研究。Wブラインドテスト。
プラシーボ/コントロール比較テスト。
特にPMS時の乳房痛を調査。ヴァイテックスのエストラクトはドーパミン作用のある化合物を含み、プロラクチン抑制効果があり、これがPMS時の乳房痛に効果的であり、その他のPMSの症状にも効果を示す可能性がある。

Schellenberg, R. (Jan 2001).
“Treatment for the premenstrual syndrome with agnus castus fruit extract”.

ヴァイテックスの実(抽出液乾燥錠剤)を使ったPMSへの効果の研究。Wブラインドテスト。
無作為、プラシーボ/コントロール比較テスト。月経3周期分の調査。
178人の女性を対象(コントロール86、プラシーボ84)平均年齢36才、平均月経周期28日。1日1錠のヴァイテックスの実の抽出液乾燥錠剤を内用。50%がPMSの症状が軽減。
プラシーボ・グループとははっきりとした結果の違いが出た。副作用は7人が訴える。

リサーチ・プロジェクト

LSA JAPANでは2008年にヴァイテックス・リサーチプロジェクトを行い、被験者(健常者)9名において3ヶ月間の使用を試みました。目的としては、月経、更年期に伴う諸症状に対する効果、その他副作用の有無などを月1回の使用経験のディスカッションと使用前/使用3ヶ月後の終了時の2回、質問票(パラメーター)に答えてもらい、その回答で解析できるようにしました。

1.予備テストとして、アンケート表を記入してもらう。
  (体調などを確認する、また過去3ヶ月の月経周期、それに伴う不快感など)
2.1日1回、両手首の内側に1滴ずつヴァイテックスのオイルを塗布、擦り込んでもらう。
  (Vitexエッセンシャルオイル5cc支給)
3.1ヶ月に1回はミーティングをし、体調、気分、不快感などを聞く。
4.3ヶ月後に再びアンケート表を記入してもらい、変化の有無を聞く。

参加者全員、楽しんで研究を続けてくれましたが(無作為のリサーチではない)、結果としては3ヶ月でもまだ人により改善が偶然かもしれないという不安定感があり、周期は改善されたがPMSはあまり軽減していない、反対に不快な症状は劇的に軽減したが周期は更年期なので改善されていないなど、完璧な結果は出ませんでした。その中でも9名中の3名が月経周期が安定し、不快な症状がかなり改善されたと報告しています。1滴手首の内側につけるという方法は、皮膚に穏やかなヴァイテックスのエッセンシャルオイルなので可能であり、またエッセンシャルオイルの小さな分子量のまま迅速に経皮吸収させるために選ばれました。これに問題がある場合はヴァイテックスのエッセンシャルオイルを2%に希釈したみつろう軟膏を用意して、これを1回小さじ2分の1杯、皮膚に擦り込む(両手首の内側がやりやすい)方法でも代用できます。吸収はかなり遅くなると考えられますが、皮膚が弱い方などは試してみるといいでしょう。

結論

ヴァイテックスの効用を考えると現在のエッセンシャルオイルではない効用があり、安全性も高いのでこれからの使用の浸透や更なる研究を期待しています。ヴァイテックスはハーブとしてはかなり有名ですが、エッセンシャルオイルとしての認知度は低く、以上の文献からの情報や研究結果が良い情報源として使用が広まることを願います。ハーブに関する文献は既に多くあるので、エッセンシャルオイルでの今後の研究が望まれます。

参考文献

1. Lucks, B., “The Vitex Anthology: Explorations in Menopausal Balance” Essential Oils and Cancer, Pacific Institute of Aromatherapy, Proceedings of the 4th scientific wholistic aromatherapy conference (San Rafael, CA: 2000)

2. Pliny the Elder :Natural History: A Selection. Materia Medica BooksXXI-XXII. (London: Penguin Book, 1991)

3. Levy, M. The Medical Formulary or Aqrabadhin of Al-Kindi. (Madison: University of Wisconsin Press, 1966)

4. Gerard, J. & Johnson, T. (ed.). The Herbal or General History of Plants. (New York: Reprinted by Dover Publications, 1975)

5. Hobbs, C., Vitex, The Women’s Herb. (Capitola, CA: Botanica Press, 1995)

6. Ibid.

7. Ody, P., Medicinal Herbal (London: Dorling Kindersley, 1993)

8. Curtis, S., Fraser, R., Natural Healing for Woman (London: Pandra, 1991)

9. Hobbs, C., Vitex, The Women’s Herb. (Capitola, CA: Botanica Press, 1995)

10. Ibid.

11. Hoffman, D., The Herbal hand Book; A User’s Guide to Medical Herbalism. (Vermont: Healing Arts Press, 1987)

12. Lucks, B., “The Vitex Anthology: Explorations in Menopausal Balance” Essential Oils and Cancer, Pacific Institute of Aromatherapy, Proceedings of the 4th scientific wholistic aromatherapy conference (San Rafael, CA: 2000)

13. Schnaubelt, K., Proceeding of the 5th scientific wholistic aromatherapy conference (San Rafael, CA: 2002)

14. Hobbs, C., Vitex, The Women’s Herb. (Capitola, CA: Botanica Press, 1995)
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by lsajapan | 2010-04-24 21:42 | ホリスティック・ヘルス