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<103> オマーンへの旅:その2

オマーンの首都マスカットで数日過ごした後、飛行機で1時間45分でサラーラに移動しました。様々なところに行きましたが、やはり1万2千本のフランキンセンスの木が植樹されているワディ・ダウカの乳香公園が何とも印象的でした。ここはユネスコ世界遺産にも指定されています。
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フランキンセンス(乳香木)が自生している場所はオマーン、イエメン、ソマリア、インドなどです。それぞれ学名が異なります。オーバーラップするものもありますが、その中でもオマーン西南部のサラーラ(ドファール地方)のフランキンセンス(Boswellia sacra)が最上級品と言われています。
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乳香木は落葉性の低木で、2m程から大きくても8mまでです。8〜10年で樹脂を産生し始めます。
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樹皮は薄く、紙のように剥がれます。マンガフという用具を使用して薄く樹皮を剥がして1週間程置くと、ミルク状の白い樹液が固まって樹脂となります。樹脂は手作業で集められます。薄いグリーン〜白〜薄茶〜茶色と様々なグレードの樹脂があります。
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グリーンホジャリ

次にウバール遺跡を訪ねました。ウバール遺跡は1992年にNASAの衛星が特定して、100mもの砂に埋まっていた失われた古代要塞都市“シスル”を見つけ出します。コーランやアラビアンナイトにも登場した都市で、紀元前3000年頃からフランキンセンスの交易の中心地として栄えました。世界遺産のフランキンセンス・トレイルの出発点でもあります。港湾都市でもあり、船でもフランキンセンスを積み出しました
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なぜ滅びたかと言うと、乳香で栄えたウバール市民は不道徳で強欲であったために、アラーの神により滅ぼされたと言います、実際、地震か地盤沈下によるものと考えられています。
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シバの女王とソロモン王にも関係が深いと考えられている場所です

その昔、フランキンセンスは金と同じくらいの価値があり、宗教儀式や火葬に使ったり、薬や香料としても珍重されました。現在はそこまでいかなくても、今だに名産地であるのは変わりありません。そして現代では石油と天然ガスが産出するので、本当に金運に恵まれた国ですね。となりのイエメンではコレラが流行し、ISが活動し、女性が虐げられているなんて信じられない程です。そしてイエメンには石油や天然ガスのような自然資源がないと新聞で読み、ショックを受けました。同じアラビア半島の最南端の2つの国なのに・・・・

マスカットからサラーラに飛行機で移動し、一泊した後に4WD2台に分乗して私たちはルブ・アル・ハリ砂漠に向かいます。スムーズなハイウェイは王様がきちんと整備しただけあって超快適。途中から砂漠の風景になり、舗装道路ではあるけれどコンクリートは敷いていない砂漠道になり、その後、砂漠の道はなくなって砂丘になりました。そこに入って行く時にはムサレムさんとハッサンさんは各々自分の車のタイヤの空気をプシューッと勢いよく抜きます。「インパクトを和らげるためですか〜?」と聞くと「その通り」の返事。その後は大アドベンチャーの始まり。砂丘の砂は毎日形を変えるのですから、風景や地形では方向も行く道を判断できないです。通常のガイドツアーはGPSを付けるそうですが、ムサレムさんは何にも見ない〜!!どうしてかと聞けば「そんなことベドウィンに聞くな」だそうです。
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ラクダに注意

そして何だかどこに向かっているのか全くわからないまま、砂漠をどんどん進んで行きます。永遠のような気持ちさえするような長い時間、1年間に3mlしか降らない雨がザーザー降りだし、そんな中で砂漠を走ると雨煙がスーッと上がり、幻想的な風景を見せていました。かなり揺れるので写真は上手く撮れませんでした。その後、さらにデコボコの砂の上を登ったり降りたり、だいたい天井くらいの高さがあるようなところも乗り越えていました。大丈夫なのかな?と思いましたが、さすがプロ。でも帰り道はハッサンさんが2回砂にはまり込み、ムサレムさんと2人でシャベルを使って掘り返していました。手伝うことはありますか?と聞きたいところですが、却って足手まといでしょう・・・でもすぐに解決していました。
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雨がやっと上がると虹が見えて、皆の歓声と共に楽しく写真を撮っていると「ダブルレインボーだ!」との声。本当に2重になっています。素敵。夕日も見ることができました。
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ところでこのルブ・アル・ハリ砂漠はオマーン、イエメン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦に広がるアラビア半島の3分の1を占めます。英語では"Empty Quarter"と呼ばれており、アラビア語でも「不毛の地」という意味だそうです。65万平方キロメーターなので、日本の国土の2倍よりは少し小さいくらいです。こんなところで迷ったらどうしよう!
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設置トイレへの道
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宿泊したベドウィンテント

雨が降ったせいで空には厚い雲がかかり、星空は見えず・・・これもフランキンセンスと同じくらい楽しみにしていたのに。でも一晩のうちに空模様は変わるかもしれないから、ムサレムさんも「1時と4時にチェックして星が見えたら起こします」とのことでした。その晩、トイレに行きたくなり時計を見たら4時半。意を決して皆の寝息の聞こえる中、1人で何も見えないテントの外に出て行きました。宇宙人やオオカミやサソリ、変態などに出会わないかヒヤヒヤしていると、フッと上を見上げると満天の星。驚いてテントに帰ってから皆を起こし、全員で空を見上げて大喜び。とてもきれいでカルデア人やアル・ビルニー、アル・キンディーたちはこの星空を眺めていたのかな?と考えてしまいました。流れ星もいくつも見て、そのうちに金星が登って来ました。(でも方向が太陽とは違うので別の天体?)
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そして朝日

朝食後、8時半には出発し、運良く砂漠の灼熱の砂は経験せずに済みました。前日の雨が幸いしたようです。結局、ルブ・アル・ハリ砂漠では、雨、雷、虹、夕日、星空、流れ星、ご来光フルコースで見ることができました!

次はオマーンの名門香水店アムアージュのことについて書きますね。そしてフランキンセンスのアイスクリームやフランキンセンス・ウォーターのことも順次書きますのでお楽しみに!
by lsajapan | 2017-05-16 23:24 | 海外にて
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