<23> エジプト続編:ジャスミン摘みにタンタへ

「みなさん、どうか気いつけてください」今日もエジプト人のガイド、デヴィッドさんが心配性なくらい皆の安全に気を使ってくれる。1997年のルクソール事件(イスラム原理主義過激派の外国人観光客襲撃事件)以来、政府は大きな収入源である観光客を減らさないために、万全の対策をたてました。観光名所の警察官の配備(見張りしつつ、キュウリ食べていたりしますが)と各観光バスに1名の警察官の乗務・・・・そうです、ダークスーツ姿ではありますが、自動操銃をたすきがけのホルターに持っていて、一人の生徒が「こんなに暑いのにジャケット着ていて大丈夫ですか?」と聞いたら「これ持っていますから」とチラリと見せられたそうです。1分間に800発連続射撃できるそうです・・・・結局タンタに入る時にはガイドのデヴィッドさん、運転手のサヴァさん、旅行代理店のジョンさん、ダークスーツの警官の4人に加え、3人の警官が乗るパトカーに先導されて行くことになりました。

サイレンを鳴らして走るパトカーとその後を走るバスに、道行く人々は立ち止まって何事かと見守る。「なんだかセレブみたい」「VIP気分ですね」「こんなの一生に一度だ!写真撮ろう!」などと盛り上がる中、「ところで山賊なんか出るんですか?」と聞くと、デヴィッドさんは山賊の意味がわからず、説明したら「そんなの砂漠の中にしかいません」との答え。「じゃあどうして?」と聞くと、まずタンタには観光客は来ない。有機農家を訪ねるグループなど会ったことはなく、仕事でタンタに行くのは長いガイドのキャリアの中でも初めてとか。「じゃあタンタは危ないんですか?」デヴィッドさんは大きくゆっくり首を振る。「クレージーです。州政府は心配し過ぎです」
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向かって右がデイヴィッドさん、左がジョンさん(武蔵丸に似ているという声)、そしてバックミラーに映っているのがサヴァさん、おまわりさんはジョンさんのお隣です。そしてバスの前に走っているのが先導パトカー

で、いよいよタンタの有機栽培農場の近くにやってきました。そこは昔話のような世界。川で食器を洗う女性たち、山羊の群れ、ロングのガラベーヤを来た男性たちが戸外でお茶を飲んでいたり、観光バスを見るために一列に並んで全ての活動を停止している子供たち、みんな手を振ってくれます。道の真ん中には極彩色の立て看板ならぬ立て募金箱。「なぜ道の真ん中にあるんですか?」「そうすると無視できないからです」とデヴィッドさん。大きなバスは時々ある募金箱のために細い道のさらに片側に寄って、ゆっくりと進みます。「何でこんなにたくさんの男の人たちがここでお茶を飲んでいるんですか?道端なのに」「募金箱が盗まれないように見守っているんです」こんなに平和な村に突然私たちは騒ぎを起こして申し訳ない・・・・さすがに帰りはパトカーの先導はありませんでしたが、ずっとダークスーツの警官(とっても優しい方です)は私たちがどこに行くのにも周りに目を光らせ護衛し、シークレットサービスのようでした。
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タンタの一風景・・・平和そのもの

着いた農場は素敵な宿泊施設が整っており、夜は農場主のフセイン氏のレクチャーでゲラン社からもお声がかかる先代からの芳香植物へのこだわりと、エジプトの歴史と農業との関わりについてのお話をお聞きしました。私の部屋の窓を開けると樹齢50年のビターオレンジの樹が延々と続きます。この樹からは3種類のオイルが採れることはアロマテラピーを学んだ方には常識ですが、実は33種類の収穫物があると教えてもらいました。オイルもプチグレン、ネロリ、ビターオレンジだけでなく、ビターオレンジフラワー・アブソリュート、オー・デ・ブルート・アブソリュート、ビターオレンジフラワー・ハイドロレート・アブソリュートなども採れるそうで、今まで知らなかったことが原産地に行くと必ず見つかるという、いつもながらに経験する驚きを十分楽しませていただきました。
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これは私の部屋から見たビターオレンジの樹々・・・ずっとむこうまで続きます

次の日の朝は5時半に集合してTea & Apple の軽い朝食(これは英国式の言い方で早朝の活動をするのにだけ十分なエネルギーをとる軽い朝食の意味)を済ませ、フィールドへ。ジャスミン畑にたどり着くまでにもフセイン氏の熱心な説明は続きます。ジャスミン摘みをする人々は近所の農家の人たちで、だいたい5〜10分徒歩でやってくるそうです。朝の3〜9時くらいの間に約3キロを摘み、1キロあたり1.5USDを受け取るそうです。エジプトの人口の60%にあたる人々が1日2USDしか稼がないのですから、1日が始まる前にすでに4.5USD稼いでから、朝の9時以降いつもの仕事をするという訳です。近所の人たちは大喜びで手伝ってくれるそうです。特に今は夏休みなので、子供たちも元気にお手伝いしています。女性たちは井戸端会議のようにいろいろな話に花が咲き、笑い声があちこちに響きます。「季節労働者ではないんだ・・・・」とちょっとだけ安堵感が。
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この写真はこの旅行で一番気に入っている写真のひとつです。口にくわえたジャスミンの一枝も服装もカッコよすぎます

大きな花の Jasminum grandiflorum は、つる性でありながら、木部はしっかりしており、だいたい120センチくらいの高さの植物です。アブソリュートの香りそのままで、柔らかく優しい、ふんわりとした美しい花です。一人に一つずつバスケットが配られ、ジャスミン摘みが始まります。ベテランのおじさんの様子を観察すると両手に一杯ジャスミンの花を持って摘んでおり、それが一杯になるとバスケットに入れてます。「でもぎゅっと握りしめるとオイルのクオリティーが落ちるんですよ」とフセイン氏。「能率とクオリティー、このバランスなんです」なるほど。

1本のジャスミンの木からは4〜6キロの花が1シーズン(6月から9月の1週目まで)で採れ、1ヘクタールのフィールドからは、よい年は1トンの花が収穫できるそうです。1トンの花から採れるアブソリュートは1.4キロ程です・・・・価格が高いのは訳があります。私たちがジャスミン摘みをした畑は2ヘクタールくらいでしょうか?日が沈むに従って、日が当たらなくなったところから、ほんの30分程でサーッと花が咲くそうです。座ってじっと見ていると目の前で次々と花が開いて行くのが見えるそうです。もう一度是非伺いたいです。お腹を鍛えて出直します!
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これはさっきのオジサンのバスケットです。多分1.5キロくらいあるのでは?私のは100gでした。
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by lsajapan | 2010-07-14 18:59 | 海外にて
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